熟練者の「勘」を伝授するには

やはり、今の研究室のやり方では色々たりないのだと考えさせられた一冊。

目次
  • 第1章 なぜ、ディープスマートが重要なのか
  • 第2章 経験を通じて学ぶ
  • 第3章 エキスパートの専門知識の課題
  • 第4章 知識を創造的に組み立てる
  • 第5章 信念がディープスマートを形づくる
  • 第6章 社会的な影響の功罪
  • 第7章 知識の移転とコーチング
  • 第8章 指導の下での経験が重要
  • 第9章 ディープスマートを育む ― 組織と個人のために


例えば、良くプログラムを行う人は何かバグがあった場合にも簡単にその答えに行き着きます。これは今までの経験によって、ここはたぶん違うなぁとか、これが怪しいぞ? といった勘が働くようになるからです。この「勘」に代表される習熟によるひらめきをディープスマートというのですが、それは一体何なのか、どうやって形成されるのか、どうやってれば教えればよいか、について書かれた本です。

これは非常に重要なテーマで、今いる研究室でも研究の行い方等を教わったり教えたりしていますが、なかなかうまく伝わらない。何かをやってみさせても、具体的指示を与えてもなかなか習得してくれません。また、自分自身が学ぶときも習得効率が悪いと感じています。

この本の7章と8章に、より効率的な伝え方について書かれていますが、その中で特に実践できていないと感じているのは「意図した結果が習得できる課題を作り与えること」と「適切なフィードバックを与えること」の2つです。特に、後者を行うのが難しい。

課題途中でのフィードバックはできている気がします。しかし、何か課題を提出した後のフィードバックがあまりありません。大学の講義の課題では、提出したら終わりで後は評価が出るだけですが、研究室の課題はそれではいけないのだと言うことが分かります。提出後には、それを1対1の対談式で評価とフィードバックを与えることが重要なのだと考えられます。今後はできるだけ組み込んでみて、効果を確かめていこうと思います。

また、フィードバックのときに重要なのが、「否定して終わるフィードバックでは伸び幅が少ない」と言うことだそうです。この点も、私のいる研究室の課題です。結構否定するだけ否定して、なかなか褒めないという現状があります。少なくとも、本書の大規模な聞き取りの結果から、それでは効率が悪いということが分かります。こちらもできるだけ変えて行かなければいけませんね。

追記(2008/01/29)
何もせず見て習うのが非常に有効であることも興味深いところです。ただし、見て習った後にコーチとそれについて話し合い、自分の意見にフィードバックを貰う場合に限るというのがポイントです。私の研究室では見て習うことはしていますが、最後の話し合いとフィードバックが抜けている。

読書時間: 2.5時間
半分以上が事例集であり、なかなか必要な情報がつかめませんでした。要点だけなら章末に書いてあるのですが、それだけではなぜそれが必要なのかが書いていないため不十分でした。

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